歯の病気に伴う歯痛は、人類の歴史と同じだけ長い。歯痛の原因を悪魔に押し付けることが全世界、例えば中国やアステカ文明の文献に見つかっている。ヨーロッパでは歯痛は悪霊の「歯虫」のせいと考え、呪文を唱えて追い払おうとした。
「おいらの歯には3匹の虫が巣くっている。
白い虫、黒い虫、赤い虫、
3匹ともみんな明日には逝っちまえ。」
さてハイデルベルク大学のエッカート教授の論文により、ヨーロッパの「抜歯」の歴史を紹介しよう。
ヨーロッパでは17世紀以降、砂糖の消費が広がりいわゆるむし歯が多くなった。ひとりでに落ちる歯はともかく、それ以外は歯科医の手によって抜いてもらわなければならなかった。従って歯の治療の歴史も内科医と同じくらい古いのだが、内科医と違うのは歯科医や歯抜き師は地位が低かったことである。耐え難い口臭を発するむし歯を抜くのは名声を得た人物の仕事ではなかったのであろう。ヨーロッパでは中世の頃から抜歯というものは、床屋医師か外科医が行っていたことがわかっている。16世紀から18世紀は「フリーランス」の歯抜き師が町から町、村から村を渡り歩き、インチキ医者と同じように広場でその技を披露した。そこには多くの観衆が詰め掛け、そこで起こる痛い出来事を同情の念もしくは面白がって見ていた。
17世紀のネーデルランドの風俗画に今回紹介する「歯抜き」が見られる。
左の絵はフィクトルスの描いた「歯抜き師」(1635年頃)
右の絵はステーンの描いた「歯抜き師」
台の上には薬と硬貨、歯抜き師のライセンスが並ぶ。
右の子供は痛みで固く握られた拳。今にも逃げ出しそうだが、腕が椅子にくくりつけられています。
(追伸)
ゆうちゃんはとても歯みがきが好きで「もう1回」と言って何回もやります。みなさんもゆうちゃんに負けないで歯みがきをして下さい。