ノーベルは建築家でありながら本業を置いて爆薬の実験に没頭する父の姿を間近に見て育った。そして研究者の道を選択する。さて「ニトログリセリン」は1846年にイタリアの科学者ソブレロにより発見されたが、熱に弱く少しの振動で大爆発を起こすため扱いに困っていた。これを聞いたノーベルはすぐさま研究に取り組んだがこの途中、ニトログリセリン製造工場の爆発事故で弟を失い、ますますニトログリセリン製造の研究に没頭した。1867年、ニトログリセリンを珪藻土に染みこませることで取り扱いを容易にすることに成功した。それがダイナマイトである。新しい爆薬は兵器として世界中から注文が殺到し、ノーベルの苦悩が始まった。
さてニトログリセリンは狭心症の特効薬であることは皆さん御存知だと思う。ノーベルはなんと晩年に心臓病を患いたびたび発作に襲われ、医師からニトログリセリン製剤を処方されるという皮肉な運命となった。
ニトログリセリンは毛細血管を拡張させる作用が一方では頭痛を引き起こす副作用となっている。そのためノーベルはこれを飲むのを拒否したと言う。ノーベルの死から約100年後の1998年、ニトログリセリンによる血管拡張作用を研究、解明した3人の学者にノーベル生物学賞が与えられた。