東京都立駒込病院の高山直秀先生の論文から現状をお話したい。
狂犬病は4300年以上前、つまり紀元前の文献にもある古くから恐れられてきたZoonosis(人畜共通伝染病)である。
日本では1949年に死亡者が76例報告された。1950年に獣医師の原田雲松議員らの努力により狂犬病予防法が成立し飼育犬の登録、飼育犬に対する狂犬病ワクチンの義務接種、放浪犬の取り締まりなどの対策が進められその結果、1957年以降、ヒトの狂犬病も犬や猫の狂犬病も国内発生は見られなくなっていた。ところが2006年、京都と横浜で60才代の男性が続けて狂犬病と診断された。いずれの人もフィリピンで飼い犬に咬まれていた。狂犬病はリッサウィルスに属する狂犬病ウィルスによって引き起こされる。このウイルスは動物の唾液中に排泄されるため動物咬傷が主な感染経路となる。
狂犬病患者から医師や看護師へ感染するといったヒトーヒト感染例の報告はない。
狂犬病は私は1度も見たことがないが、講義では詳しく習った。体内に入ったウィルスは潜伏期1~3カ月の後、脊髄に到達し、けいれんを起こす。特に水を飲もうとするときや冷たい風が頬に当ったときに咽頭頸部の激しいけいれん発作が起きるので水分を拒否し風を避けるようになると教わった。(恐水症、恐風症)。
結論は、狂犬病が常在する地域に旅行や出張するときは、出発前に2回の狂犬病ワクチン接種を済ませておき、咬傷を受けたら直ちに狂犬病ワクチン接種を受けることである。
潜伏期が長いだけに発見、診断が難しいということを是非、覚えておいて下さい。