皆さんは耳鳴りに苦しんだことはありませんか?これは本人にしか分からず他人に理解されない辛い病気です。
歴史をひもといてみますと、あのベートーベンは第九交響曲を作曲していた時、既に耳鳴りと難聴でほとんど聴力を失っていました。作曲家として耳鳴りは大いに仕事の邪魔となったと思われます。次に劇作家で宗教文学を代表する倉田百三も晩年、耳鳴りで悩みました。最後に、江戸後期の俳人、小林一茶も晩年、耳鳴りに苦しみました。「夜の霜 しんしん耳は 蝉の声」という句がありますが、耳鳴りの音が蝉の声に思えたのだと、想像されます。一茶は高血圧やめまいも同時に患いました。
さて、なぜ音のないところに音の感覚が発生するのか、そのメカニズムは全くわかっていないのですが、音を感じる内耳の感覚細胞が障害されているのではないかといわれ、耳鳴りを訴える患者さんの多くは何らかの聴力障害を持っています。そして睡眠を妨げられたりノイローゼに陥る方もいます。末梢血管拡張剤やビタミン剤、精神安定剤や最近ではTRT療法(耳鳴順応療法)が行われていますが完治は難しいようです。過労、睡眠不足、ストレス、濃いお茶、カフェインを避けることも肝要です。一刻も早く、新薬の登場が待たれます。