児玉さんは学習院大学では演劇部で、篠沢秀夫さん活動していた。卒業後、東宝のコンテスト「ニューフェイス」に合格し、黒澤明監督の「悪い奴ほどよく眠る」に出演した。一方、TV俳優として「白い巨塔」「HERO」など数々の人気連続ドラマにも出演した。一方、読書家としても知られ、ある時「本って捨てられないんですよね。家は本で占領されている」と話されていた。「アタック25」は一般出場者を気遣う、知的で誠実な司会ぶりがお茶の間の幅広い年齢層で支持された。ひとえに誠実な人柄の賜物だと思う。もう一つ有名なのは趣味の「切り絵」。最後まで病室に道具や材料を持ち込んでいたと言う。
児玉さんが切り絵について2003年12月に出版した本「たったひとつの贈りもの」(下の絵)は、ネット販売のアマゾンで2位となり、売り切れが続出している。
さて本題に入ろう。児玉さんは死因は胃癌であった。今年2月に体調がすぐれず、検査を受けた所、肝機能異常が見つかり更に調べているうちに、胃癌及びその肝転移と分かった。
娘さんが奇しくも2002年36才で胃癌で亡くなっている。私は母校、東医歯大に居た時は胃班(マーゲン斑)に属し、毎日のように胃癌の手術をしていた。今から30年前はエコーやCTもなく、胃癌はとに角、開腹が行われた。今でも思い出す数々の転移例。肝臓や腹膜に多発性転移を見つけた時は、何もせずに閉腹となった。むなしかった。
検診のあまり発達していなかった当時は、胃癌はがん死因の一位であった。
さて児玉さんほどの有名人は社会的地位や責任もあるのに、どうして検診を受けなかったのか、まわりもどうして勧めなかったのか残念でならない。一説によると、児玉さんは極度の医者嫌いだったと伝えられている。王監督のように早期で発見できれば腹腔鏡下での摘出が可能な時代となった。もっと早期なら、内視鏡的切除も可能である。
どうか児玉さんの死を無駄にしないで、皆さん1年に1回は検診を受けていただきたいと痛切に願っております。