御近所でもあり、よく犬の散歩で出会った。愛犬のコリー犬を連れていつも元気に歩いていた。所が平成19年頃からパーキンソン病がひどくなり当院に入院となった。やがて認知も進み、食事摂取が不能となった。当時、中心静脈栄養を行っていた。こういった方の場合、気をつけなければならないのが寝たきり肺炎である。ある時、ひどい肺炎となり、挿管をして一命をとりとめたが、長期化が予想された。そこで娘さんに「声は出なくなるが、気管切開をしたら肺炎から逃げられる」と説明をした。娘さんは直ちに「お願いします。長生きさせて下さい」と返答があった。そして気管切開を行い、栄養は鼻腔栄養を施し、長い長い入院生活が始まった。
この4年半の間に色々な事があった。重度の褥創に対して手術を行った。昨年は重症肺炎やMRSA肺炎でもうダメかと宣告した時に施したステロイドパルス療法が奏効し生き返った。何度も三途の川に足を踏み入れたKさん。よくがんばったが、18日の深夜、あばれることなくスーと息を引き取った。
何の処置も必要なかった。家族には「大往生でした」と説明をし、葬儀の車が来る間、この4年半の色々な話をした。認知がありながらも孫の結婚式の写真には特に笑みを浮かべていたこと等、思い出は尽きない。
御冥福をお祈りします。