うつは不眠症のみならず、さまざまな不定愁訴をもたらす。また心血管リスクを2.7倍増加させるという報告もある。慈恵医大の藤田Dr.の論文を見ると、「うつ病患者の血液検査で炎症反応の指標である血清CRP値が軽度上昇していることがよくある。この軽度のCRP値上昇が、動脈硬化やメタボリックシンドロームを悪化させる」とある。このようなことを考えると、我々開業医も肉体のみならず、最低限の心のケアは欠かせないと思う。
さて話は変わって、熊やリスは冬眠するが、水分を全く摂らない状態で何故、彼らの血液は凝固しないのだろう?よく分かっていないが、ある研究によると、休眠中のリスは血清α2マクログロブリン値が上昇していて、これが血を固まらせないようにしているのでは、と言われている。さらなる研究でうつ状態の患者でもこのマクロブログリン値が上昇していることがわかり、うつは一種の冬眠状態、すなわち人生からの一時的な逃避行為ではないか、と藤田Dr.は推測している。
そうすると軽度のうつ病は放置しておく方がよいという逆説的な意見が成立する。いわゆる「寝ている子を起こすな」である。軽度のうつは人生におけるわずかな休息日かも。