これは困った事態である。私の友人O君は埼玉で20年以上、整形外科の開業医(無床)をしている。先日、夜9時に電話を入れた。それは彼の地域が第3グループに属し、その日も昼間停電が行われていたことを知っていたからだ。開口一番、O君は「もう開業医をやめたいよ。毎日毎日、半日は停電で、これが来年の冬まで続くと聞いて、うつがひどくなった。」と。当然収入減で、かといって職員の給料は減らせないから、来月は赤字になりそうとの事。彼は、以前よりうつがあり、薬を飲みながらの診療であったが、今回の停電騒動は更に追い討ちをかけているようだった。「越智君、もう関西へ引っ越してのんびり開業医をしたいよ。しかし関西は身内が誰もいないからなあ」と寂しくつぶやいた。
さて関東東北が電力不足で困っているのは、(廃炉にすることが決まった福島原発を除いても)、福島と茨城にあった火力発電所がダウンしたことが大きい。東京電力の今の電力パワーは3500万KW。夏場の需要は6000万KW、冬場は5000万KW、と予測されている。
では関西から電力を供給してはどうなのか、という素朴な疑問がわく。これは調べてみると、ヘルツの変換装置建設に10年かかるそうで、全く無理との事。現在、いったん休止した火力発電所の再起動などが行われているが、計画停電は1年以上続くのは間違いなさそうである。産業、経済、教育全てが集中する首都圏。かつてない難局を菅首相がいかに乗り切るのか。その手腕にかかっている。
話は変わって、当院の薬の話。新聞報道にもありますが、甲状腺のクスリ「チラージンS」が極端な品不足です。製造元のあすか製薬の「いわき工場」がやられたためですが、甲状腺機能低下症の方にとっては、このクスリは生命線です。1日1錠の人もいれば、3~4錠必要な人もいますので深刻です。保団連は住江会長名で、チラージンSの緊急輸入を政府に要請しました。それと経鼻、経管栄養だけで生きている当院に入院中の高齢の患者さん。エンシュアリキッドが一番合っているので毎日使用していたが、この薬も販売中止に。代替品もままならず、外来で取りに来られる人の分を全部お断りして、何とか1カ月分は確保。しかしその後の見通しは立っていない。娘さんに状況を説明した。「みんなで苦労を分かち合うしかありません」との返答。医療分野にとどまらず、色々な所に支障が出てくると思われます。
頑張って乗り切るしかありません。