病人のみんな見て置く医者の癖
往診で呼ばれた家で患者ばかりでなく頼まれもしないのに居合わせた子供や年寄りの顔色や脈を見ておく。こうした情感こそ、今日言われている在宅医療の原点ではないでしょうか?
さて、私の手元にある「江戸名所図会(ずえ)」の見出しに「本町薬種店」とあります。日本橋本町には「薬種」と書いた大きな袋の看板が数多く掛かっていて日本の医療の大衆化を物語っています。江戸のショッピング・ガイドブック「江戸買物独案内(ひとりあんない)」にある合計2,622軒の商店のうち売薬屋が207軒、薬種屋が50軒、つまり10軒に1軒は薬屋ということで江戸は薬屋だらけの町だったようです。薬づくりが産業化され芝居にまで薬のコマーシャルが現れた、とあります。本町通りは当時のトップ企業のストリートでありました。 (つづく)