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2011/10/13

クモの糸


「クモの巣が張った」等とクモにはあまりいい印象はない。嫌われ者で日陰の存在のクモ。1995年に毒グモのセアカゴケグモが大阪に上陸してから、クモ嫌いはますます加速されていた。ところが2002年に「スパイダーマン」が上映されてから、クモは表舞台に登場してきた。今回はクモ博士の大﨑茂芳さん(奈良県立医大教授)の論文から引用させていただいて、クモの糸の神秘に迫ろう。
クモの糸と言えば浮かぶのは、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」。原作はアメリカのポール・ケーラスの「カルマ」の中の“The Spider Web”であり、鈴木大拙によって翻訳され芥川が脚色した。小説の中で、お釈迦様が池から地獄に垂らしたクモの糸に伝って罪人のカンダタが登ろうとするシーンがある。最後は切れてしまうが、みなさんはきっとクモの糸は案外強いぞという印象をもたれていると思います。
さてここからが大﨑さんの出番です。大﨑さんの夢は「クモの糸に人間がぶら下がれるか?」でした。2004年に所ジョージのTV番組「所さんの目がテン!」に2回出て、クモの糸にぶら下がる実験をして2回とも失敗。ここからが氏のすごい所です。改良に改良を重ね、2006年に65㎏の氏が、クモの糸につるしたハンモックに乗って世界をあっと言わせたのでした。
さて大﨑さんの実験の途中で牽引糸の強さはクモの重さの2倍であることをつきとめた。だからクモは糸にぶら下がれる。クモの糸は電子顕微鏡で見ると円柱状の細い2本のフィラメントからなっている。たとえ1本のフィラメントが切れても、残りの1本でクモを支えることができるのである。いわゆる命綱である。ここからクモの命綱に関する“2”の安全則が得られ、1996年イギリスの「nature」に掲載された。
“2”の安全則は、危機管理を人間に教えてくれる。危機の分散観点から例えば、社長と会長は出張に際し、同じ飛行機に乗ってはいけない。防犯のために玄関ドアには2つの鍵をつけ、火災などには2カ所の出口を作る。医療面での事故を避けるには、最低2人が操作を十分に確認する。道路にしても震災を考えて、別の所にもう1本のルートを設ける等、色々なことを教えてくれる。人類の400万年と比べて桁違いに長い4億年を生き延びたクモには危機管理術が備わっているのである。
最後に大﨑さんはクモの糸でバイオリンを奏でようと日々努力をされているそうです。
下図は、氏の論文から引用しました。巣の中心部から外へ放射状に伸びている「縦糸」は巣の骨格を作り力学的にかなり強い。粘着球が付いている渦巻き状の「横糸」は巣に飛来した獲物を捕らえるのに適している。巣を取り囲んでいる「枠糸」や枠糸と木をつなぐ「繋留糸」がある。「牽引糸」はクモが危険に遭遇した時にすばやく逃げるための命綱としての役割を果たしている。

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— posted by 越智邦明 at 03:02 pm  

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