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2011/6/9

2万5千年の荒野


ゴルゴファンなら知っている、1984年7月に描かれた「2万5千年の荒野」。
何故取り上げたかと言うと、この作品は当時、既に原発問題を取り上げた社会派の問題作としてきわめて評価が高く「THEゴルゴ学」(小学館)の読者アンケートで第2位となった人気作品である。
話はロサンゼルスから北方80kmのヤーマス原子力発電所(G&E社)が舞台。作業中にクレーンが加熱器の逃がし弁に当たり、それを主人公バリー技師が所長に報告する。
「はずしてレントゲンチェックをしましょう」と。それに対して所長は「安全弁が5つもあり、しかもE・C・C・S(緊急冷却装置)があるじゃないか。心配するな。」と却下する。
しかも「ロス五輪開会まであと2週間なので余計なことはするな。技術屋が完璧を目指す必要はない」と言い放った。それから事故が起こる。復水ポンプに異常が発生。
バリーは会長に2日後の通常運転の延期を申し出る。しかし会長はバリーを出入り禁止とする。
さて政府要人を招いての通常運転開始の日。出力80%まで行った所で突然の停電。しかし自家発電が入らない。圧力、温度共急上昇。とたんに構内にいた見学の一般人が一斉に逃げ出した。
緊急冷却装置も始動スイッチを入れるが作動しない。ここは逃がし弁だと作動するも反応がない。
「原子炉建物内に放射能」と作業員が叫ぶ。
排気口から外部に放射能が漏れ出した。風の計算をすると、3時間でロスに到達する。
「スリーマイルの時でさえ逃がし弁は開いていたぞ」とパニックに陥る。専門家が集まる。プルトニウム239の毒性について語られ、その半減期は「2万5千年」にみんな腰を抜かす。
最後はバリー達が決死隊となり、ゴルゴ13の手を借りて、サージ管を狙撃することに成功し、冷却水が入り成功となる。しかし主人公バリーは高い放射能を浴びて死んでしまう。
さて、ほとんどの用語が、毎日TVで耳にしている福島原発と一緒で驚いた。事故収束へ向けてのパニックは今と一緒だ。福島では多くの“バリー”が今なお命がけで作業をしている。さて原発と政治利権の絡み、原発メーカーと原発規制組織が表裏一体であることの弊害、エネルギー政策の在り方など、今日もなお解決されていない問題が本作では提示されている。この本の発表後2年経った1986年4月にチェルノブイリ原発事故が発生した。作者、さいとうたかお氏の先見の明に脱帽である。
(写真左はチェルノブイリ原子力発電所)

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— posted by 越智邦明 at 03:27 pm  

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