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2012/7/30

お酒が強いか弱いか?(その1)


患者さんの問診で喫煙歴と飲酒歴を必ず聞く。タバコは何本、何年間と聞くが、お酒が今回のテーマである。慶応大循環器科の佐野元昭Dr.の論文から引用させていただく。
佐野先生は循環器科医として、「お酒が強いか弱いか?」を聞く方が重要と説く。
その心を説明します。皆さんの周りにはお酒が強い人、弱い人、全くダメな人が居ると思います。御存知の「アルコール分解酵素があるかないかの違い」という当りは御存知の通りです。
専門的に言うと、アセトアルデヒドの代謝能力の違いということになります。アセトアルデヒドの代謝はALDH2というアセトアルデヒド脱水酵素が担っている。ALDH2をコードしている遺伝子には遺伝子多型が存在していて(専門的ですが)、活性型のALDH2*1に対してALDH2*2は不活性型である。ALDH2*2/ALDH2*2のホモのヒトはALDH2の酵素活性がなく、全くお酒が飲めない。この遺伝子変異はアジア人に特徴的で、日本人では4割のヒトがヘテロで、1割のヒトがホモで持っている。つまり日本人の10人に1人は、お酒が全く飲めないということです。じゃあ、お酒なんか俺は飲めなくていい、と言うかもしれませんが更に話は進みます。
アセトアルデヒドはお酒に関係なく体の中で自然に生じており動脈硬化、アルツハイマー病など老化や酸化ストレスによる疾病発症の一因となっている。ALDH2はアルデヒドの除去に重要な役割を果たしており、今言った遺伝子変異を持っているヒトはお酒に弱いだけでなく酸化ストレスによる障害を受けやすい体質と言える。
さて「酒は百薬の長」という言葉があるが、佐野先生曰く、「これはお酒が体にいいということではなくて、お酒を飲めるヒトが健康であるということであるかもしれない。」と大胆な仮説を述べられている。
更に狭心症の患者には「お酒が飲めるか否か?」を問診しておくことが重要であると言う。それは狭心症の特効薬のニトログリセリンから体内で一酸化窒素NOを作るのが実はALDH2であることが最近わかったのである。つまりお酒が飲めないヒトは狭心症の発作時にニトログリセリンを使用しても効果不十分の可能性があるそうです。
今回は目からウロコのお話でした。
このテーマの続編を8月9日に出します。

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(追伸)
最近のゆうちゃん。
表情が豊かになり、時々、大人のしぐさを見せます。
お友達と遊ぶ楽しさを覚え、最後の写真はバレエの見学に行ってレオタードを着せてもらったようです。「バレリーナ」ゆうちゃん?

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— posted by 越智邦明 at 04:01 pm  

2012/7/26

マラソン中の心停止


「市民マラソン」が世界中でブームである。
しかし一方でマラソン中の心事故が増えているのも事実である。
今回米国でのレポートを紹介したい。米国のマラソン参加者は年々増えて、2010年は200万人もいる。2000年から2010年に米国でマラソンに参加した1090万人を対象に、競技中の心停止に関する調査研究が行われた。
(結果)1090万人中、59例の心停止(平均年齢は42才、男性が51例と圧倒的に多い)があった。ほとんどが心血管疾患によるものであった。中でも肥大型心筋症と冠疾患(動脈硬化性)が多かった。全行程の最終1/4で心停止が多いのも分かった。
今回のデータに基づいて考えると、参加前の検診として若年者は心肥大がないことを確認することがとても大事である。そして全行程の最終1/4にAEDなど蘇生にかかる器具を重点配備することが必要である。(一部、東大健康医科学創造講座の森田Dr.の意見も取り入れました)。
マラソンの悲しい事故をなくしたいものです。

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— posted by 越智邦明 at 03:45 pm  

2012/7/23

大腸がん


大腸がん検診に国や市町村が力を入れ始めた。特に便を2回採取して調べる便潜血検査。2回共、陽性の場合はかなり大腸がんを疑う。
6月に当院で陽性であった男性Yさん(55才)。大腸ファイバーで観た所、直腸癌であり、直ちに公立病院に紹介しopeを受けた。幸い、人工肛門にならず順調に退院してきた。opeの執刀医からは「来年なら進行癌で人工肛門になっていたかも知れない」と言われたそうで、随分感謝された。
大腸がんはステージ1なら、5年生存率は90%以上。ステージ3でも65~80%で治療成績がとても良い。ところがステージ4になると20%に下がる。それだけにいかにステージ3までに見つけるかが勝負です。便潜血検査を1年に1回受けていると、大腸がんの死亡リスクが60~80%下がることが研究で証明されている。大腸がんで明らかな症状が表れるのはステージ4です。病状を当てにしていてはせっかく助かる命も助かりません。
皆さん、是非、簡単な便潜血検査を受けて下さい。

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— posted by 越智邦明 at 04:52 pm  

2012/7/19

糖尿病と食事


糖尿病は血糖値が上がる病気なので、ちょこちょこ食べる方がドカ食い防止になってよい、という信念の人が居ます。
結論的には間違いです。
なぜかと言うと、食後の血糖値の上昇が持続し血糖値が高止まりしやすくなります。つまり下がる暇がない。そうすると動脈硬化→心筋梗塞、脳梗塞といった図式になりやすいのです。
それと、ちょこちょこ食べると歯周病になります。食事でいったん口の中は酸性になりますが、しばらくすると中性に戻ります。しかしいつも食べていると酸性に傾いたままになり、虫歯になったり歯垢がたまったりして歯周病になります。歯周病になると、口の炎症があるところから炎症性物質が放出され、それがインスリンの効き目を悪くするため病状が悪化しやすいのです。
結論として、やはり食事は3食にすべきです。そこで妙案は毎食後の歯磨きです。すると間食が明らかに減ったというデータがあります。
参考にして下さい。

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— posted by 越智邦明 at 04:54 pm  

2012/7/17

乱視


「乱視」ってみなさん眼鏡屋さんでも聞いたことがあると思います。しかし乱視を放置したために、めまい、頭痛、吐き気がまるで脳卒中のように生じるという論文を読みました。
こういう方は適正な乱視矯正で症状が消えるとあります。また、いま書いた症状以外に「目が乾燥する」「首や肩が凝る」「物が二重に見える」「文字が見えづらい」といった症状も出ます。乱視は角膜の歪みで光がどこにも一点を結ばない状態です。遠くも見えにくく、ピントを合わせるのが不安定で常に物を見るのに努力がいります。筋肉の収縮が続いたり疲労によって自律神経が乱れたりして、さまざまな不調が生じます。
もし乱視と判明したら、コンタクトレンズを乱視の度合いに応じて調整して下さい。
一番調整しやすいのはハードよりソフトコンタクトレンズのようです。

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— posted by 越智邦明 at 11:18 am  

2012/7/12

鼻血


鼻血そのものは大したことがなくても、実は大きな病気のサインということもある。子供の鼻血に比べ大人は怖いとも言われる。
鼻血で一番多いのは鼻の入り口のキーゼルバッハという部位の血管が傷ついて起こる出血である。いざ鼻血が出たらどう対処するか?
昔は「上を向いて首の付け根をトントン叩く」などと言われたが今は×。上を向くと血が喉に流れ落ち、吐き気や嘔吐を催す。
鼻血が出たらまず前かがみになり、脱脂綿を親指ぐらいにして詰めてから両側の鼻翼を親指と人さし指で挾み、強くつまむようにして15分間押さえ続けるとほとんど止まります。それでも止まらない場合が問題です。
例えば白血病や肝硬変などの血小板が減少する病気、悪性の鼻茸、上顎がん、上咽頭がん、更に糖尿病、尿毒症、ビタミンC欠乏症なども考えなくてはいけません。
しかしとりあえず止血しにくいときは、耳鼻科でレーザーなどで血管を焼き潰して止血する方法が勧められます。
たかが鼻血も続く場合や止まりにくい場合は精査が必要です。

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(追伸)
最近のゆうちゃん。
いよいよ水泳に取り組もうと水着姿に。やや不安そうな顔つきです。
プールをあがると、いっくんや友人ととても楽しそうです。
宇和島の田園で、あじさいや田んぼの中ですくすく育っているようです。

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— posted by 越智邦明 at 05:00 pm  

2012/7/9

脳梗塞


脳梗塞の発症時期の研究から夏と冬に多いこと、さらに気温差が激しい時ほど多いことが分かってきた。
気温が上がると血管は拡張して血圧が下がる。一方、気温が下がると血管は収縮して血圧が上がる。この両者の程度が大きく頻繁になると血管がダメージを受け脳梗塞を起こしやすくなる。
夏は脱水症状も加わり血液の粘度が上がって血栓ができやすくなるので冬以上に注意が必要です。そして肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症などを抱えている人はよりリスクが高くなります。
そこで対策として①常温の水をちょびちょび飲む。一気に冷たい水でなく、こまめに補給すること。②室温と外気温の差を小さくする。クーラーで一気に冷やさない。せめて10度以内にする。
これから暑い夏を迎える今頃、要注意です。

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— posted by 越智邦明 at 05:08 pm  

2012/7/5

糖尿病学会in福岡


DMサミット2012が今回は6月30日(土)、福岡で行われた。
会場のヒルトン福岡シーホークホテルには1300名のDr.が全国から集まった。素敵なbigなホテルであった。
1日目で面白かったのは「糖尿病にまつわる動脈硬化性疾患」で信州大学の池田教授が話された。特に下肢血行障害(PAD)について詳しく述べられ復習ではあるが、足の血行状態を常に観察することの重要性(ABIの測定)を説かれた。
次にスウェーデンのRyden博士の英語による討論は、インスリンのグラルギン(=ランタス)の有用性についてのお話で全世界にわたる膨大な調査であった。特にグラルギンの発癌については特に問題がないとの結論であった。
2日目は「最近のDPP-4阻害薬でコントロール不良例について」という実臨床的な討論があった。トータライザーによる会場アンケートでは他剤を加えるが54%、SU薬を加えるが42%で、インスリンは2%であった。河盛Dr.寺内Dr.が座長で進められた。東邦大の引世Dr.はやはり何といっても基礎インスリン(グラルギン)の補充を忘れてはならないと力説された。引世先生は以前、順天堂大の助教授の時に松山に講演に来られたが、インスリンの使用方法はやはり超ベテランであった。そして全般的にインスリンの開始時期が遅いことに警鐘を鳴らしていた。私自身もインスリン早期導入派なので引世先生の話はひとつひとつが納得がゆく。
今後、DPP-4阻害薬とインスリンの併用療法の治験が大いに進むことを大工原Dr.矢部Dr.等も話されていた。
最後にもう1度、「DPP-4阻害薬とインスリンの併用を先生は考えますか」というアンケートに92%の人が「YES」と答えたのが印象的であった。朝6時起きであったが充実した2日間であった。

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— posted by 越智邦明 at 05:10 pm  

2012/7/2

ノーベル


ノーベル賞の創設者として有名なアルフレッド・ベルンハルド・ノーベルは各国で350を超える特許を取得した偉大な発明家である。
ノーベルは建築家でありながら本業を置いて爆薬の実験に没頭する父の姿を間近に見て育った。そして研究者の道を選択する。さて「ニトログリセリン」は1846年にイタリアの科学者ソブレロにより発見されたが、熱に弱く少しの振動で大爆発を起こすため扱いに困っていた。これを聞いたノーベルはすぐさま研究に取り組んだがこの途中、ニトログリセリン製造工場の爆発事故で弟を失い、ますますニトログリセリン製造の研究に没頭した。1867年、ニトログリセリンを珪藻土に染みこませることで取り扱いを容易にすることに成功した。それがダイナマイトである。新しい爆薬は兵器として世界中から注文が殺到し、ノーベルの苦悩が始まった。
さてニトログリセリンは狭心症の特効薬であることは皆さん御存知だと思う。ノーベルはなんと晩年に心臓病を患いたびたび発作に襲われ、医師からニトログリセリン製剤を処方されるという皮肉な運命となった。
ニトログリセリンは毛細血管を拡張させる作用が一方では頭痛を引き起こす副作用となっている。そのためノーベルはこれを飲むのを拒否したと言う。ノーベルの死から約100年後の1998年、ニトログリセリンによる血管拡張作用を研究、解明した3人の学者にノーベル生物学賞が与えられた。

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— posted by 越智邦明 at 05:53 pm  

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