娘が11日に旅立った。今度はまぎれもなく人間の話である。私は両家の挨拶をすることになっていて10日の夜は緊張していた気がする。寝っころがっていたところに娘がやってきて顔を見るなり、こう言った。「お父さん、眉剃りをしたら顔がひきしまるよ。やろうか?」と。躊躇なく私は従った。タオルをかけられ、じょりじょりと始まった。一生懸命やってくれた。これが独身最後の私への仕事なんだと思うと胸が熱くなった。何時間もやって欲しかった。やがて完成して鏡を見せられた。「どう?」眉はどうでもよかった。「いいよ」とつぶやいてラストナイトは終わりを告げた。結婚式よりもこの日を一生忘れない気がする。東大を落ちた時よりもこのせつなさははるかに大きい。マキよ、26年間ありがとう。