さてピロリ菌は胃がんを引き起こすバクテリアとしても知られている。胃癌死が多い日本人に於いて陽性率が高いことから、がん予防の観点からも除菌を勧められている。ところが例えばタイでは日本人と同じように、50才以上で6~7割がピロリ菌に感染しているのに胃がん死亡率は低い。10万人あたりの胃癌死亡率は、日本人の38人に対してタイは3人である。このナゾに対して研究が進められた。そこでごく最近になって分かったことは、コレステロールに善玉と悪玉があるようにピロリ菌にも善玉と悪玉があることである。
大阪大学の微生物学の山本容正教授によると、日本とタイのピロリ菌が実は別物であることがわかった。日本人のピロリ菌は「東アジア型cagA」という遺伝子を持ち、この悪玉ピロリ菌は胃壁にくっついてがん化を強烈に進めることもわかった。さきほどのタイでの調査で、胃癌になった人はやはりこの悪玉ピロリ菌が居て、他の多くの人はこの遺伝子を持たない善玉であった。
近い将来、自分のピロリ菌が善玉か悪玉かが遺伝子検査で簡単に測れるようになるようだが、それまではピロリ菌陽性なら早めに除菌をした方が良いと思われます。