マスコミで取り上げられるようになって2年が経つイベント「涙活」。仕掛け人は寺井広樹氏であるが、ビデオを見たり語り部の話を聴いて人は感動して涙を流す。そして泣き終わった後にスッキリした気分を味わう。その行動をストレス解消に活用して「涙活」としてイベント化したと言う。
人はなぜ感動して泣くのか?これは哲学的テーマであるが、東邦大学の有田秀穂名誉教授が科学的に分析した結果を読んでみた。
「泣けたビデオ」を見ている最中に局所脳血流変動を近赤外線分光分析装置(NIRS)で連続記録した。すると流涙に先行して前頭前野内側部の血流が短時間激しく増加することを発見した。この脳領域は「共感」によって賦活されることも分かってきた。脳の状態変化は自律神経にも現れ、交感から副交感への切り替えとして特徴づけられた。そもそも涙腺を刺激して流涙を促すのは副交感神経である。心拍変動にも副交感へのシフト(徐脈)が観察された。流涙が始まる直前には必ず頻脈になり、人には心臓の高鳴りとして自覚される。ところが流涙が開始されると同時に心拍数は逆に減少に転じ泣き終わるまで続いた。私は今まで感動して泣くときは交感神経優位かと思っていたが論文にて、脳はなぜか癒しの副交感優位に一時的に切り替わり、ストレス緩和の脳の状態にシフトしていたのだ。
つまり「泣いてスッキリ」は科学的にも実証されたのである。脳が疲労したときには、「感動して泣く」ことは人間の脳をアクティブに休ませる安全弁なのです。
尚、(ホームページで見ていただけたら)2006年、夏号(vol19)のくに~ず新聞に「泣いて健康」のタイトルで涙を流して泣くことの健康効果について書いています。参考にして下さい。